4人兄弟の長男に生まれた夫は、兄弟喧嘩が起きるたびに、彼が原因でなくとも、両親に怒られていたという。
母親に叩かれ、父親にはムチやベルトで叩かれた。
外で喧嘩をしてやられて帰ってくると、母親に容赦なく何十分も叩かれる。
帰宅した父親が何事かと尋ね、母親が喧嘩をしてきたことを知らせると、今度は父親がムチやベルトで30分でも40分でも叩く。
しばらく前に、涙をこぼしそうになりながら、娘と私の前で夫はそう語った。
夫の父親は長男である夫に厳しく、家族で車にのっていて後ろの座席で兄弟喧嘩が始まると、容赦なく運転席から片手を後部座席へ向けて、平手打ちをする。叩かれるのはいつも真ん中に座っている夫だった。
窓側を常に弟と妹に占拠され、決して窓側が良いと我が儘を言えなかった夫は常に長男だからという理由で我慢を強いられてきたのだ。たとえ自分が悪くなくても叩かれることになっても。
父親は夫が20歳前後の頃に交通事故で亡くなった。
父親が厳しかったから、自分は悪い道に入らなくて済んだという。
中学、高校時代も暗くなる前に帰宅することを要求された。守らなくてはムチやらで叩かれるのだから、怖くて堪らないだろう。
親に従うのは子供の勤め。確かにそうだ。でも、子供の人権はどうなる。
子供の人権なんて話しをしたら、夫は鼻でフンと笑うだろう。
そんなことを言ってるから、日本の子供はおかしくなってるんだと。
でも理不尽な言動は、相手からの信頼を失う。
「私が泣いているのは、お金がないからでも仕事がうまくいかないからではない。自分の夫の性格に泣いてるんだ。」
と、仕事が進まず罵られ、「お前が私の人生を壊した」という言葉を投げつけられ口論の末に言ったことがある。
何でも人のせいにしてしまうのも夫の困った性格だ。
親から理不尽に叩かれ育ったのだから、何とか自分には責任がないことにしようとしてしまうのだろう。
昨夜、娘もつぶやいていた。
「私も悪いけど、父親がこんな性格だということが恥ずかしいと。」
部屋を、タンスを、衣類のポケットを探られ携帯もロックをかけ忘れるとチェックされる。
ミクシィを読まれ(日本語が読めないので、自動音声読み上げソフトを使ったらしい。)、娘の、入ってはいけない領域に踏み込む。
賛否両論あるだろうけど、私は親は娘の全てを知らなくて良いと思う。全く見てみないふりをするというわけではなく、悪い道へ入らないよう、親子の信頼感を深めながら助言をしていく。
娘の父親は必死になりすぎて、想像も相まって苦しみ、憎しみさえ抱いているようにみえる。少なくとも娘はそう思っている。
一度裏切られたと思ってたら、決して許さないのが娘の父親だ。
これからも毎日のように娘の一挙一動に神経質に怒りを投げつけ続けるだろう。
心まで傷つけられながら、娘は父親と一緒に生活するべきか。
ビクビクしながら我慢をすることも大切だろう。でも、それこそ父親が心配するような行動を娘は起こしてしまうのではないだろうか。
家出
こんなことを書いていたら、
「anatano musumeno profile」
というタイトルのメールが届いた。不審に思いよくよく見ると夫からだ。
そして案の定、娘の「前略」というサイトのプロフィールへのURLが本文に張り付けられていた。
昨夜、そのサイトも消すように、夫が娘に言ったのだ。
ミクシィを突然消したことを伝えなかったのだろう、そのことも簡単にかいてある。
「やりたいこと」欄には「バイクに乗りたい」とある。
それはしばしば娘が私に言っていることだ。もちろん、バイク事故で死んだ知り合いの話しをして、大人になるまでは乗ってはいけないと何度も話してきた。
でも乗りたいのだから、書いたっていいと思う。
他には心配するようなことは書いていない。
でも昨日のうちに消さなかったことで、今夜も夫の逆鱗に触れることになるだろう。
夫は安定剤を飲んでくれるだるうか。一昨日はひとしきり激怒した後に、
「薬の時間だ」とつぶやいて飲みにたった。娘にツパを吐きかけながら。
その前は、「薬を飲んだから良かったけど、もし飲んでなかったら、どうなってたか分からないぞ」と、激怒して娘に言ったという。
自分の病気さえも娘のせいにして脅迫している。
「私は戦争に行って、敵のところから無事に帰ってきたんだ。怖いものはない。なんでもできる。ミクシィをまた開設しても、すぐに分かるからな。なめるんじゃないよ。これが最後だ。次に何かあったらどうなるか知らないぞ。」
単なる脅迫ではない。
夫の性格から、なにをするか分からない。
心配性で厳しい私の両親に電話して、どんなに娘と妻が酷いかと、一期にしゃべり尽くすかもしれないし(そして両親の怒りと心配で、娘はさらに傷つくことになるだろう。)、あるいは娘を徹底的に叩きのめし、暴言を吐き、深い心の傷をつけるかもしれない。
あるいは、学校に電話するなり乗り込んでいって、娘のことを大声で歎いて騒ぐかもしれない。
あるいは、近所中に聞こえるように、日本の教育は変だ、馬鹿だと喚き散らすかもしれない。
私も心配しすぎかと思うけど、夫ならやりそうだ。
彼は常に被害者なのだから。
かわいそうに。
でも、私は娘と二人で、逃げたい。
夫も出ていっていいというんだから。
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