2011年5月15日日曜日

柳田邦男先生

20年ほど前の学生時代に、1、2冊だけ戦時中の人体実験を扱う作品を読んだだけだが、心の中に尊敬の年を抱いたまま時が過ぎてしまった、ノンフィクション作家、柳田邦男先生の講演を、今日、間近に見聞きする機会に恵まれた。

幼児教育に携わっていることは全く知らなかった。
絵本を読むことによる心の教育は、私も含め本好きな親なら試行錯誤で自分の子に実施したことがあるだろう。

でも、今日の講演で、小学一年生だった娘と共に海外に移住した時に、荷物は輸送しないという夫の方針で、99%以上の絵本を処分し、ほんの数冊しか持参しなかったことを、私は後悔することになった。

乳児の頃から絵本を読み聞かせていたが、娘は本好きなにはならず、中途半端な語学力のために、活字自体を敬遠する傾向にある。

その結果、当然のように勉強嫌いになってしまった。
親の責任なのに、勉強しろと親から責められる娘は本当に可愛そうだと思う。

先生はまた、絵本は幼児だけでなく、仕事に明け暮れる大人にも大切だという話をされた。


そしてサイン会では、

「絵本は人生の心の友」

と書いてくれた。

でもその時私は、前の人に書かれていた、

「読むことは生きること」
という言葉が欲しかったのだ。「絵本、、、」と書きはじめられたことに、私は少なからずショックを得て、

隣に「読むことは、、、」をお願いしようと迷っていたら、並べて書けそうだった余白に日付が入り、そして先生の達筆なお名前が入り、本が差し出された。

私は字の達筆さと先生の名前に感動を覚えながらも、
「読むことは生きること」
という言葉をいただけなかったことで、差し出されてもなお、本を凝視したままでいた。

一瞬後、我に帰って差し出された本から目を上げると、ニッコリと微笑む柔らかな、印象深い先生の笑顔があった。

「ありがとうございます」
と笑顔でお礼を伝えたが、
さぞかし先生も、無表情で手元を凝視している私にギョッとしたにちがいない。

私は後悔している。もう一つの文章も書いていただけばよかった。

「絵本は人生の心の友」
というのは、普段、自分のためには読まない、絵本という未知の世界へのメッセージとして、

「読むことは生きること」
は読むことを欲し愛している私への励ましとして。

次にチャンスがあればと思うけど、図々しいかなと遠慮してしまった私は、間違えだったと思う。

二度目はないかもしれないのだから。

人生では一瞬で心を決めて行動にうつさなければならないことがたびたびある。
私は何度、後悔することになってきたことか。

それでも後者は書いてもらえなかったけど、強く心に刻まれたことはたしかだ。

20年のときをへて、私の前に現れた、柳田邦男という心の片隅にひっかかってきた敬うべき先生に、新たな気持ちで向き合いたいと思う。

サインを書いてもらおうと会場で購入した本は

「雨の降る日は考える日にしよう」(平凡社)

だ。絵本そのものではないのが、絵本を自分のためには読もうとしない私の、自然な行動なのだろう。

それでもこの本では、大人に薦める44冊の絵本が紹介されている。

戦時中の話を描く柳田邦男というイメージを覆す「絵本」の紹介に、心を揺さぶられる何かを捕らえることができるだろうか。

未知の世界に入っていくのが楽しみだ。


まあその前に、読みかけの五木寛行の「ヒトラーの遺産」を読んでしまいましょうか。

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